若冲の十牛図
東北道の栃木ICを降りて、佐野市葛生へ。
セメントと石灰製造のプラントが向こう見える
場所に佐野市立吉澤記念美術館はあった。
最終日の開館数分前だが、団体客を除いて
来場の方は少ない。
お目当ては、今年重要文化財に指定された
「菜蟲譜」。
植物と虫達を巻物の中に描きこんだもので
あるが、その雰囲気はいたっておとなしい。
金比羅さん奥書院で観た「花丸図」や、
2日前に上野で観た「動植綵絵」のような
壮麗さや精密さ、そして彩りのきらびやかさ
はない。
しかし、そこには、野菜や虫たちがありのままに
生きている。
飾ることもなく、他者を意識することもなく、
そのままに素直に、一生懸命生きている。
観終わると、遊びのコーナーがあって、
置かれている色鉛筆やクーピーで、
「菜蟲譜」の一部を模写できる企画があった。
私が選んだ題材は、蓑虫くん。
目立たず、ひっそりと
(鳥の襲撃を考えれば当たり前だが)
そこにいた。
ぴんと張った糸の下で、ただひたすら眠って
いるのだ。
その凛とした姿は、上野で観た一本足の小鳥
と重なる。
それはまた、深草の石峰寺の門前で
晩年をひっそりと、しかし作画は旺盛にこなした
若冲翁の生きざまとも重なるのだ。
今回の展示のなかに、狩野探幽の十牛図があった。
「菜蟲譜」は。ただの生き物の写生画ではなく、
いかにも若冲らしい「十牛図」なのである。
それは、今これを書きながら飲んでいる、
静岡の「開運」さんのひやおろし(*1)の味のように
枯淡であるが、とても深い。
(*1)ひやづめ純米 山田錦
精米歩合55% 土井酒造場








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